ストリート ピアノ/ヴェネチア、サンタルチア駅

ストリート ピアノ

奥の方にテノールで「サンタルチア」を歌った人が見えます。時間表の下にピアノがおかれています。

奥の方にテノールで「サンタルチア」を歌った人が見えます。

駅の中のピアノ、歌が終わってみんながそれぞれの方向へと去っていきます。

駅の中のピアノ、歌が終わってみんながそれぞれの方向へと去っていきます。

ヴェネチア、サンタルチア駅

ヴェネチア、サンタルチア駅

サンタルチア駅を通る時、時々こんなシーンに合うことがあります。

サンタルチア駅にはピアノがあります。この蓋を開けてその椅子に座って、誰かが突然ピアノを弾き始めます。すると誰かが歌を歌い始めます。歌い手が上手だとみんなが周りに集まってきます。予定されていなかったコンサートが始まります。もちろん、電車を待ってる間のコンサートで、電車に乗る時間が近づいてくると、歌い手もピアノを弾く人も、短いコンサートを終わりにして、ピアノの蓋を閉じて、周りの人々に挨拶して電車の方に向かって行きます。集まっていた人々も顔にまだ微笑みを残しながら、電車の方、あるいはヴェネチア市内の方に向かって再び急ぎ足で歩き出していきます。

昨日パードヴァから帰った時、テノールのとても上手な声量のある外国の人が、ピアノの演奏とともに「サンタルチア」を歌っていました。周りに集まった人々はみんな大喜びで、みんなが携帯で録音を始め、歌が終わると絶賛の拍手でした。

ピアノをひいた人も歌った人も嬉しそうで、このあとは、みんなそれぞれ自分の目的の場所にと散らばっていきましたが、この突然の演奏の後はみんな満足げで、嬉しそうにその場を去って行きました。駅というこの殺伐とした場所が、ふだんは急いだ人が通り過ぎるだけの空間が、ピアノ一台のおかげで一瞬にして変わり、コンサートの前と後では、参加したの気持ちが変わったのは確かでした。たぶんみんなの世界に対する感覚もほんの少しだけきっと変わったに違いありません。

ストリート ピアノは、2008年にロンドンに生まれます。ノンプロッフィトのアソシエーションで、駅など人の集まる公共の場所にピアノをプレゼントしています。元々は英国のアーチストLuke Jerram のアイデアによるものです。今では世界に700以上のストリートピアノがあります。

ヴェネチアの場合は、作曲家であり、ピアニストでもあるソフィア タリアーニさんと、「グランディスタツィオーニ」(駅の環境のクアリティーを上げる目的で作られた会社)との協力でこのストリートピアノがサンタルチア駅に2014年に実現しました。

ある晩遅く駅についたこの冬のことです。

冬はホームレスの人々が寒さをしのぐために駅に集まりますが、私が電車から降りてこのホームを通り過ぎる時、4人ほどのホームレスの人々がこのピアノの周りに集まっていました。このうちの一人がピアノを弾き始め、他の二人はピアノからながれる美しいメロディーに目をつむってうっとりしながら踊り始め(私の知らない曲でした)、もう一人はピアノニストの指の動きに見とれてリズムをとりながら、ピアノにのめり込むように聞き入っていました。フェリーニの映画のシーンを目の前にしているような微笑ましい詩的な光景で思わず足が止まってしまいました。

ストリートピアノの効果は小さくても計り知れないもののようです。

金銭だけで動く今日の世界に、それとは別の、人と人との無償のつながりを築く、本当の意味での「広場」(アゴラ)を作ることを可能にするストリートピアノの生み出す空間は些細でも、明日の希望に満ちたものです。

 

(2015年、6月現在/ピアノは今サンタルチア駅にはありませんでした。いろいろな駅を回っているようです。また帰ってくるといいと思います。駅の雰囲気が全く違います。)

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筆/ヴェネチア 公認ガイド 田口やよい

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