アウシュピッツ解放70周年/1月27日、ホロコースト記憶の日/トリノ市とプリモ レヴィ

 

トリノ カステロ広場に展示されたアウシュビッツにユダヤ人を運んだ貨車

トリノ カステロ広場に展示されているアウシュビッツにユダヤ人を運んだ貨車

 プリモ レヴィ展示会「鋭敏な明晰さ/ プリモ レヴィの世界」

期間/2015年1月22日 – 4月6日まで

場所/Palazzo Madama, Corte Medievale)

 

貨車は撤退されるべきか?(トリノのカステロ広場に展示されている貨車に関する論議)

毎年1月27日は、世界中を通じて、ホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)の記憶の日ですが、特に今年アウシュピッツ解放70周年を記念して、トリノではイタリア文学の最高の名作のひとつといっていい「これが人間か」を書いたプリモ レヴィの展示会が行われています。プリモ レヴィはトリノの生まれです。

この展示会の一部として、トリノ市のカステロ広場に、アウシュピッツに連れて行かれたユダヤ人達を乗せていった貨車が展示され、これが、Juvarra設計のパラスのファサードの景観を壊すというので、その撤退を言い渡したトリノ文化遺産保護局長が大きな非難の的になっています。カステロ広場は大きなコンサートに使われたり、巨大なクリマスツリーが飾られたり、市場がでたり、いろいろなものが持ち来られる場所ですので、今回の文化保護局長、Luca Rinaldi氏の決定は理解の領域を超えるものでした。トリノ市長や、最後には文化財省大臣、Dario Franceschiniの介入もあって、このトリノ文化遺産保護局長はこの提言を撤去し、貨車はそのまま、展示会が終わるまで、広場に展示されつづける事になりました。

 

プリモ レヴィ「これが人間か」

プリモ レヴィの「これが人間か」は、すばらしい本です。1945年から1947年にかけて書かれた本で、アウシュピッツから帰ってきたレヴィが自分の体験を語ります。ページによっては、慟哭なしに読むことのできない壮絶な悲劇が描かれています。これだけ深い悲劇が理性的な文体で淡々と語られますが、同時に人間としての威厳を完全に剥奪した行為への憤怒は、表現という行為の中で昇華され、重々しく純粋になり、人類全体の詩と言っていいほどの高い芸術性に達し、「救い」と言ってもいいような経験をさせてくれる感動的な本です。

プリモ レヴィの「これが人間か」の最初のページの詩の日本語訳はレヴィの文学の根底にある過去の文学(特にダンテ)、旧約聖書など、レヴィが意図した前例を考慮せず訳されますので、内容の理解も文の持っている深い含蓄も違ってきて、私の知ってる限りでは、誤訳の部分があって、文の持つリズム、調子なども訳され切れていませんので、残念なことです。

「これが人間か」のこのすばらしい詩を訳してみます。私の訳もたいしたものではありませんが、普通の出版されている訳よりは、レヴィの言葉に近いものです。

 

プリモ レヴィ 「これが人間か」 (最初のページの詩)

温もった家で、安息に生活しているあなた達よ

家に帰れば、温まった食事と親しい顔を見つけることができるあなた達よ

考えてほしい、これが男(人間)か

泥にまみれて働き、

安らぎを知らず

たった一かけらのパンのために争い

是非の一言だけで死が決められてしまう

 

考えてほしい、これが女(人間)か

髪もなく、名前もなく、

もう覚えている力さえ失い

目は空洞で、腹腔は冷えきり

まるで、冬のカエルのように

 

深く考えてほしい、ほんとうにこうしたことが起こったのだ

これらの言葉をあなた達に命じる

心に深く刻み込むのだ

家にいる時も、道を歩く時も

寝にいく時も、目覚める時も

あなた達の子供達に繰り返して言い聞かすのだ

でなければ、あなた達の家は崩壊され

病気があなた達の行動を不可能にするだろう

生まれてくる子供達はあなた達から顔を背けるだろう(あなた達を裏切るだろう)

 

**リズムはダンテの「神曲」が裏にあります。たくさんの言葉なども、ダンテの「神曲」の言葉、リズム、旧約聖書の言葉などを無視しては、特に訳す段階で誤解が生じます。プリモ レヴィは自分の体験を書いていますが、本自体が人類全体に対する証言といってもよく、人類全体の責任に訴える集団的な視点から書かれています。

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他にもこの「記憶の日」につながる展示会がイタリア中で行われています:展示会「Domani scriverai ancora…sulle traccia di Anna Frank(明日も書くでしょう-  アンナ フランクの跡を追って)」/Genova Museo Ebraico ヘブライ博物館(1月23日から3月19日まで):  1月25日にはLiana Milluが「Il fumo di Birkenau (ビルケナウの煙)」を、ジェノヴァのパラッツオ ドゥカーレで、公開音読します。

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筆/ヴェネチア 公認ガイド 田口やよい

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